アプリケーションノート
ヌクレアーゼとは
ヌクレアーゼ(Nuclease)は核酸分解酵素の総称で、デオキシリボ核酸ないしリボ核酸の糖とリン酸の間のホスホジエステル結合を加水分解してヌクレオチドにします。
RNAを特異的に分解するもの(RNase)やDNAの1本鎖または2本鎖に特異的に分解するもの(DNase)、両方を分解することができるヌクレアーゼも知られており、その役割も様々です。遺伝子工学で用いられる制限酵素(Restriction enzyme)もヌクレアーゼの一種で、DNAの塩基配列を認識して特異的に切断を行う。
核酸配列の末端から順に切断する酵素をエキソヌクレアーゼ(exonuclease)といい、核酸配列の内部で核酸を切断する酵素エンドヌクレアーゼ(nedonuclease)と呼ばれます。
ここでは、Lucigen社Epicentreブランドのヌクレアーゼを紹介します。
【DNAヌクレアーゼ(DNase)】
DNAエキソヌクレアーゼ(DNA Exonuclease)
アプリケーション | 製品名 | 基質 | 活性 |
プラスミドサンプルから染色体DNAの除去 | Plasmid-Safe ATP-Dependent DNase | 直鎖ssDNAと直鎖dsDNA | 直鎖DNAを選択的にせん断。ニック、閉環状DNAには活性はありません |
dsDNAサンプルからプライマー及びssDNAの除去 | Exonuclease I, E.coli | ssDNA | Mg²+存在下でssDNAを切断する3’→5’エキソヌクレアーゼ活性 |
Rec J Exonuclease | ssDNA | Mg²+存在下でssDNAを切断する5’→3’エキソヌクレアーゼ活性 | |
Exonuclease VII | ssDNA | ssDNAを5’→3’と3’→5’の両方向にせん断 | |
部位特異的変異導入のための中間体作製 | Exonuclease III, E.coli | dsDNA | 3’末端のニック、平滑末端、3’凹末端から2本鎖DNAをせん断する3’→5’エキソヌクレアーゼ活性。RNase H, 3’-DNAフォスファターゼと脱プリン塩基DNAエンドヌクレアーゼ活性があります。 |
Pick Up
Plasmid-Safe ATP-Dependent DNaseは、非常に好評のある製品です。
Plasmid-Safe ATP-Dependent DNaseは、環状DNAには作用せずに、直鎖状の1本鎖、2本鎖DNAを分解します。プラスミド、コスミド、フォスミド、BACクローンやベクター調整物にコンタミしている染色体DNAを選択的に除去します。nicked、closed環状dsDNA、スーパーコイル状のDNAは分解しません。
Plasmid-Safe ATP-Dependent DNaseを使用することによって、コンタミしている染色体DNAがクローニングやシーケンシングされる可能性を最小限に抑えます。
この酵素活性には中性pH、10mM Mg²+と1mM ATPが必要です。Plasmid-Safe ATP-Dependent DNaseは、dsDNA、ssDNAをデオキシヌクレオチドに分解します。
下記図は、一本鎖DNAの除去にPlasmid-safeを使用した結果です。
SmaI制限酵素処理した細菌DNAとプラスミドDNAをPlasmid-Safeで処理しました。
- レーン1:マーカー(1k base)
- レーン2: 3μg細菌DNA (SmaI制限酵素処理)
- レーン3: 500ngプラスミドDNA
- レーン4: 3μg細菌DNA+500ngプラスミド
- レーン5: 3μg細菌DNA+500ngプラスミド+Plasmid-Safe処理
DNAエンドヌクレアーゼ(DNA endonuclease)
アプリケーション | 製品名 | 基質 | 活性 |
RNAプレップからDNAの除去 | Baseline ZERO DNase | dsDNA, ssDNA |
dsDNAとssDNAをモノヌクレオチドにまで分解 |
RNase-Free DNase I | dsDNA, ssDNA |
Mg²+存在下でDNA鎖をランダムに切断 |
【DNA/RNAヌクレアーゼ(DNA及びRNAに作用するヌクレアーゼ)】
アプリケーション | 製品名 | 基質 | 活性 |
細胞溶解液からタンパク質を精製するためのDNA, RNA除去 | OmniCleave Endonuclease | dsDNA, ssDNA, RNA | Mg²+存在下でDNA鎖、RNA鎖をランダムに切断 |
mRNAサンプルからのmRNAのエンリッチメント | Terminator 5'-phosphate-dependent Exonuclease | ssDNA もしくは ssRNA |
5' 一リン酸末端をもつssDNAもしくはssRNAを分解する5'→3'エキソヌクレアーゼ活性 |
Pick Up
Terminator 5’-phosphate dependent Exonucleaseは、5’に一リン酸化末端をもつRNAを特異的に分解します。そのためtotal RNA中のリボソーマルRNA(rRNA)を除去することができ、真核生物のmRNAにあるキャップ化RNAは分解しません。
【RNAヌクレアーゼ(RNase)】
アプリケーション | 製品名 | 基質 | 活性 |
DNAサンプルからのRNAの除去 | RNase A | ssRNA | ssRNAをピリミジン残基の3'側で切断 |
RNase I, E.coli | ssRNA | 全てのジヌクレオチドペア間でssRNAを切断 | |
高結合DNA:RNAハイブリッドの検出 | Hybridase Thermostable RNase H | DNA:RNAハイブリッドのRNA | RNA:DNAハイブリッドのRNAを切断 |
環状RNA、ラリアット構造RNAの単離 | RNase R | 直鎖ssRNA | ラリアット構造のssRNA末端を含む線状RNAを分解 |
※n.d., not determined
Pick Up
RNase Rは、ほぼ全ての線状RNAを分解する3’→5’エキソヌクレアーゼですが、ラリアットまたは、環状RNAは分解しません。そのためtotal RNAサンプルからスプライシング中のイントロンRNAを単離することが可能になります。